五所平之助 (1902-1981)
1925年に松竹蒲田で監督デビューし、日本初のオールトーキー『マダムと女房』(1931)や、川端康成原作『恋の花咲く 伊豆の踊子』(1933)などの名作を生み出す。戦後は東宝で『今ひとたびの』(1947)がヒットとなるも、東宝争議で契約を打ち切られ、その後は自ら興したスタヂオ・エイト・プロダクションなどで活躍。実存主義の小説家・椎名麟三や、作曲家・芥川也寸志など気鋭の若手と組み、日本社会に生きる人々の不安と希望、善意と愛欲の絡まるメロドラマを多く生み出した。細やかなカット割りで捉えられた何気ない所作や日用品といった日常風景から、人生の深淵をのぞき込む不穏な物語を立ち上げる演出は絶品。『挽歌』(1957)、『猟銃』(1961)などヒット作を生む一方、晩年には人形劇映画や記録映画も監督。探究心旺盛な巨匠として、興行・芸術面ともに日本映画を支え続けた。また、五所亭の名で俳人としても有名。
(執筆:玉田 健太/参考文献:国立映画アーカイブ企画上映プログラム)
(執筆:玉田 健太/参考文献:国立映画アーカイブ企画上映プログラム)