映画を止めてはならない…コロナ禍に各国映画祭がつなぐ希望の光
3月1日に閉幕したベルリン映画祭は新ディレクターの就任や新部門の創設などでにぎやかに盛り上がり、帰路に就いた参加者たちはこれが今年最後の映画祭訪問になるかもしれないなどとは微塵も思わなかったに違いない。中止、延期、オンラインへの転換など、3月以降の各国の映画祭はさまざまな形の決断を迫られ、捲土重来を期している。そんななか、サンダンス映画祭の旗振りのもと、世界21か国の国際映画祭が集結したオンライン映画祭「We Are One:A Global Film Festival」 (*1) は、映画祭が連帯してひとつの上映イベントを実施するという意味で画期的であったと同時に、映画を見せていかないと映画が止まってしまうという危機感が各映画祭に共通していることを示すものでもあった。同様に、実質的な中止を余儀なくされながら、世界随一の影響力を誇るカンヌ映画祭が今年の選出作品を発表したのも、自分たちが止まってしまうと世界の映画のサイクルが止まりかねないという危機感の現れである。そのカンヌが世界の映画の原動力たることを期待した作品群に、河瀨直美、深田晃司、宮崎吾朗の各監督作品が含まれたことは、この厳しい時期に差し込む希望の光ではなかろうか。カンヌの申し子・河瀨直美氏、新スター・深田晃司氏、そして日本のアニメを代表して宮崎吾朗氏という多様性に富んだ3監督の作品(*2)は、かつてのカンヌ上映作品とは比較にならない次元で、深く歴史に刻まれることになるだろう。
*1 東京国際映画祭のプログラムは、湯浅政明監督短編アニメーション、深田晃司監督特集、長編作品『勝手にふるえてろ』『アイスと雨音』が選ばれた
*2 河瀨直美監督作品『朝が来る』、深田晃司監督作品『本気のしるし』、宮崎吾朗監督作品『アーヤと魔女』がカンヌ映画祭のオフィシャル・セレクション2020に選出された